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執筆者の写真Kumiko Porom

山田うんさん『EN』を振り返って



今回のブログは、山田うんさんが『EN 』について書いてくださいました。


旅は「やって来る」もの。自分から旅先を決めてるつもりでも、「旅」というのはこちらへやって来るもの、と思います。場所というのはそういう大きな威力がある、と。


それで、メキシコ、がやって来ました。メキシコの旅、行って来ました。胃腸炎になりましたが、夜通し、2時間ごとに飯嶋ナース、土本ナースがやってきて体温チェック&私の体を起こして「お水を飲みましょう」と、現地のポカリのようなものを飲ませてくれたおかげで、私は翌朝復活することができました。強く優しいパジャマの天使たちよ!

 

 

さて、リハーサルなしのぶっつけ本番。スタッフが最強です。衣装製作、毎朝の朝ご飯を作ってくれる西口シェフは、なんと音響オペレーター!。土本ナースはメイクアップ&現場の細々した事件の解決マネージメント!飯嶋ナースは衣装デザイナーであり衣装製作であり栄養士であり、まず、このLatijapo発起人でもあり、なんと今回は黒子デビュー!という、一人何役やねん?というカッコ良すぎるアミーゴ達です。みほさんは、開演1時間前からどんどん続々やって来る、たくさんのゲスト達と気持ちの良いおしゃべりをして、和やかな空気を作ってくれて。みのるさんは開演前に繊細に素晴らしい言葉で作品解説をしてくれました。とにかく私以外最強。頼もしい人しかいない!

 




ダンスは「現在」しかない場所。心から嬉しい瞬間。地面ごとひっくり返るようなエネルギーが湧き、一歩、また一歩と舞台の上。心の疾走感をギュッと束ねて、できるだけ「私」を消して、身体が観客一人一人と出会っていく。そして照明の中に入る。と!と!と!、、、床がツルツル!。昨日ワックスをかけてくれたのでしょう(涙)。感謝です。が、ツルツル滑る、、。すごい滑る。やばい、、。まじこけそう、と思いながら、転ばないように腹に力を入れ、、、ち、ちから、、入らない!胃腸炎のせいで、お腹がヘナヘナ、、と思っているうちに一曲目が終了。





 

次に黒子に扮した飯嶋さんが着替え介助のため舞台上に、、。と言ってもマスクをしてるからその姿ほぼ見えず。とにかく、着替えは共同作業なので、飯嶋さんの呼吸に耳を澄ます。圧倒的な安心感!その所作は日々日常の美しい生き様そのもの。丁寧に一つ一つが儀式のように展開していきました。



 

和紙との戯れ。飯嶋さんとの呼吸。ツルツルとの共存。

 

パフォーマンス最終章に用意されていた衣装は、飯嶋さんの亡くなったお婆さまのお着物。羽織ったとたん、息が整いました。着物は和紙とは違ってずっしりと重く、私が人間であることや、地球に重力があることを思い出させてくれて、私を穏やかにしてくれて、目の前のお客様の健康と幸せを祈願して舞うことができました。ツルツルしてたけど転ばずに。そしてクライマックスは衣装の「引き抜き」。この儀式が見事に成功してパフォーマンスは終わりました。わたしは、終始、弱い身体だったけれど、たくさんの拍手が、、、。



 

 

普段、だいたいにして、この世界のあちこちで生きている多くの人は、拍手をもらうことなんてほぼない。どんなに頑張ってもえらいことしても、なかなか拍手をもらうことなんて。舞台に降り注いだ、一人一人の手のひらと手のひらのパチパチとお客様の笑顔は、衣装も音響も黒子もメイクもナースも、、何役もやってのけた、仲間達への、そして会場のスタッフや、ここを繋いでくれたみほさんやみのるさんへの祝福の音楽でした。私が舞台の真ん中で、お辞儀をしましたが、それはもう全員分のお辞儀。ああ、このパチパチの音、日本まで聴こえてるだろうか、、。このミステリアスな作品『EN』は絶対一人では生まれない。「円」は見えるものだけど、「縁」は見えない。全然見えないところから「円」みたいな形が生まれて成長して進化していった。これが「ゼロ」っていうことなのかもしれない?。拍手の音をぜんぶ、ご縁ある人間達に持って帰らねば、と思った。

 

「メキシコの古代文明に近しいものを感じた」「舞踏の先生に、自分の舞踏を見つけろと言われてきたが、ずっとやり方がわからなかった。今日これを観てヒントになった」「貴方が紙袋の中に入ってしまった時なぜかわからないが泣いてしまった」たくさんの感想をいただいた。

 



別の日は、カリブ海で泳いだ。太陽が地平線に沈み、満月が水平線から上がるのを見た。偉大な建築家達の素晴らしい建築物にもたくさん出会った。ルイス・バラガン、ハビエル・セノシアインなど。え?!SF?これ、現実?!生きていることが嬉しくなるような「目の前」があった。今、ここにいる自分のことも、他人のことも、全部好きになる景色がある。景色は作れる。やって来る。







 

メキシコはどこか、ヨーロッパの街のようでもあり、東南アジアの街のようでもあり、日本人と近しい価値も宿っている。これまで私、北半球を中心に世界を見過ぎていたかもしれない。Latijapoはコロナ禍になるずっと前から準備をしていたプロジェクト。なんていう大胆なプロジェクトなのでしょう。再発見の旅。びっくりの連続。企画した頃は、私が行くことになるなんて誰も思わなかったことでしょう。これからも、誰かにそんな「縁」が訪れるに違いない。壮大な夢の実現。ここに何かある!。大きい、大きい、大きな宇宙船に乗って宇宙に行ってきたようなメキシコだった。




All photos by LatiJapo

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